近年、国の障害者福祉政策では「施設から地域へ」という方針が強く打ち出されています。これは、障がいをお持ちの方が施設に閉じ込められるのではなく、地域社会の中で当たり前に暮らせる環境を整えるという、共生社会の実現に向けた取り組みです。
しかし、実際の進捗状況には課題もあります。
国の検討会で報告された最新データによると、障害者施設から地域生活への移行率は4.6%にとどまり、第6期障害福祉計画で目標としていた「6%以上」を下回る結果となりました。
このわずかな差の背景には、いくつかの大きな要因が存在します。
地域移行の足取りが重くなっている要因には、次のような現場課題が挙げられます:
入所者の高齢化・重度化が進み、個別支援に高度な対応が求められること
地域での受け入れ体制、特に重度障害者に対応できる施設・サービスの不足
ケア人材や看護体制の不足による、地域支援体制の脆弱さ
特に「重度障害者を地域で受け入れる受け皿が足りていない」という点は、福祉事業者や自治体にとって非常に深刻な問題です。
このような課題がある一方で、ポジティブな変化も確実に進んでいます。
長期入院を余儀なくされていた障がい者の数は年々減少
福祉施設から一般企業への就職者数は増加傾向
これは、就労移行支援や生活訓練などの支援制度が整ってきた成果ともいえます。
また、「誰もが地域で活躍できる社会」というビジョンに対して、多くの関係者が真摯に取り組んできた証でもあります。
このような希望ある流れを本物の社会変革にするには、地域で生活する障がい者を支えるインフラ整備が不可欠です。
中でも重要なのが、重度化・多様化するニーズに対応できる専門的な施設の整備です。
寝たきりに近い方でも安心して暮らせる環境
医療的ケアに対応可能な設備・職員体制
高齢重度障がい者の生活の質(QOL)を支える構造・動線設計
こういった施設が地域に整備されることにより、はじめて「地域移行」が“実質的な選択肢”になります。
重度障がい者の受け皿が不足している今、このニーズに応える高品質な施設を地域に提供できる事業者には、社会的にも大きな役割が期待されています。
つまり、これは介護・福祉事業者にとって、新たな事業機会の創出にもつながるタイミングでもあります。
次に、もうひとつの重要なテーマをご紹介します。それは「地域共生社会」の実現です。
地域包括ケアシステムが推進される中で、介護事業者には介護保険サービスの提供だけでなく、地域との関係づくりが強く求められています。
ある介護事業者では、既存の施設の一部を活用し、地域の高齢者や住民が集まる「地域共生スペース」を立ち上げました。
ここでは、週1回「住民カフェ」が開かれ、多くの地域住民が集い、談笑しながら軽食を楽しんでいます。
この取り組みの最大の特徴は、運営の主体があくまで住民自身であることです。
地域共生スペースは、高齢者だけの居場所ではなく、以下のような多様な価値を持ちます:
元気な高齢者同士が支え合い、介護予防に寄与
地域に信頼される事業所として認知度が向上
将来の介護利用者と早期に関係性を構築
地域の中で介護人材・ボランティアの発掘ができる
このように、地域共生スペースの整備は事業としての価値も非常に高く、長期的な視点での資産にもなります。
高齢化・重度化・多様化が進む障がい福祉分野では、
「安心して暮らせる場所」=施設の質と数が、今まで以上に重要になります。
また、介護・障がい福祉事業者にとっては、
こうした地域課題に応えることが、選ばれる事業者になる最大の鍵でもあります。
弊社では、福祉施設の新規開設から運営支援までトータルでサポートしています。
施設づくり・人材育成・制度活用など、介護・福祉事業のパートナーとしてお役立ていただけます。